日本とアラブの「当たり前」
「今は誰も必要としていないのだから、座ればいい。」
日本の電車で、優先席が空いている。
お年寄りもいない。妊婦もいない。けがをした人もいない。それでも、日本では座らない人がいる。
一方、エジプト人なら、「今は誰も必要としていないのだから、座ればいい。必要な人が来たら、そのとき立てばいい」と考えるかもしれない。
どちらが正しいのだろう。
本書が考えるのは、正解ではありません。なぜ、同じ状況を見ているのに、日本とエジプトでは「当然」の行動が違うのか。その背景にある、目には見えない「当たり前」を読み解いていきます。
「普通」は、国が変われば普通ではなくなる
私たちは、自分が育った社会のルールを毎日意識して生きているわけではありません。時間を守る。人に迷惑をかけない。相手の気持ちを察する。家族を助ける。困ったときに人に頼る。どれも、その社会の中にいれば、ごく普通のことです。
ところが、別の社会へ行くと、その「普通」が突然、不思議に見えてきます。そして、自分では正しいことをしているつもりなのに、相手からは「なぜ、そんなことをするの?」と思われる。
本書では、こうした身近な違和感を入り口に、日本とエジプト、そしてより広いアラブ社会の「当たり前」を見つめ直します。

本書が見つめる、六つの違い
1
READING
日本人は「場」を読む。
エジプト人は「人」を読む。同じ会話をしていても、どこから相手の本心を読み取るかが違う。
2
KINDNESS
日本人は、相手のために一歩下がる。
エジプト人は、相手のために一歩近づく。違うのは、優しさの方向。
3
SAYING NO
日本人はノーを空気の中に置く。
エジプト人はノーを可能性の中に置く。「難しいですね」と「インシャーアッラー」。
4
SUPPORT
日本では、助けが「仕組み」の姿でやってくる。
エジプトでは、助けが「人」の姿でやってく る。制度の公平さと、人間関係の柔軟さ。
5
TIME
日本人は時計を守ることで人を大切にする。
エジプト人は、人を大切にするために時計を動かすことがある。
6
FAITH
日本では、宗教が習慣の中に隠れる。
エジプトでは、宗教がことばになって現れる。
どちらが正しいかを決めるための本ではありません
日本の「相手に迷惑をかけない」という配慮には、大きな強さがあります。エジプトの「まあ、話せば何とかなる」という柔軟さにも、大きな強さがあります。そして、どちらも行き過ぎれば、人を疲れさせることがあります。
本書が問いかけるのは、「どちらが正しいか」ではなく、「なぜそうす るのか」。相手の行動だけを見ると、不思議に見える。その行動の後ろにある「当たり前」が見えると、同じ行動がまったく違って見えてきます。
異文化を理解するとは、違いをなくすことではありません。
違いの意味を、翻訳できるようになることです。
こんな方におすすめします
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海外ビジネスに携わっている方、外国人社員と働いている方
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国際交流・国際教育に関わる方
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海外赴任や留学を考えている方
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異文化コミュニケーションに関心のある方
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日本について、改めて考えてみたい方
外国を見ることは、自分を見ることでもあります。エジプト人の行動を「なぜ、そんなことをするのだろう?」と思いながら読んでいるうちに、いつの間にか「では、日本人はなぜ、そうするのだろう?」という問いに変わっていくかもしれません。