アラブ人は、妬みの感情を持つ人が居て、その人の邪悪な眼に凝視されると災難が起こると信じる。それを邪視「ハサド」という。「ハサド」という言葉はコーランにも出現するため、この超能力現象を信じる人が少なくない。ただし、直截には、コーランには妬みの感情を抱くことだけを問題にしており、邪悪な眼などによる災難の話はどこにもない。
具体的に言えば、新しく買った高い時計や車を妬みの感情を抱く邪悪な眼を持つ人に見られ、褒められると、新しい時計や車が壊れたり、自分の身に何か災難が起きたりすると一般的に思われている。コーランには、妬みの感情を手放すように、「マーシャーアッラー」という言葉を言うようにと述べられていることから、この言葉が邪視除けとして使われるようになった。このような理由から、褒めるときに必ず「マーシャーアッラー」と言おう。褒める表現や他の言葉がなくても「マーシャーアッラー」だけで十分だ。
邪視除けとしては、他にも写真のような青い飾り物やアクセサリーがある。手や目の形をしたものが多い。青色が邪悪な眼を引き、大事なものからその眼をそらすことができると思われている。5という数字も邪視除けにも効果的だと思われる。給料や子供の人数などについて聞かれ、数字で答えなくてはならないよう場合、意図的に5を答えに含む人が多い。
相手の抱く気持ちがもちろん分からないわけで、また、妬みという感情が一時的に起こり得ると考えられるため、アラブ人は褒められることに関してかなり敏感なのだ。とくに、子供に関して非常に敏感で、「マーシャーアッラー」と言われても不安を感じる人が少なくない。そのため、「マーシャーアッラー」の他に別の表現を付け加えて言うことが多い。例えば、「アッラーが偉大なり」と訳される「アッラー(フ)アクバル」。
褒める際に、そのほかに、具体的に褒めないように注意しなくてはならない。例えば、子供の場合、日本でよく聞く褒め言葉は「まつ毛が長い」、「目が大きい」などが挙げられる。このような褒め方で邪視されているという風に捉えるアラブ人が多いので、このような具体的な表現で褒めないでください。とくに子供に関しては「マーシャーアッラー」だけで十分だ。相手のアラブ人が「うちの子がクラスの中で一番だ」などと言って子どもの自慢話をしてきたとしても具体的な質問を避け、「マーシャーアッラー」で褒めよう。たいてい本人が具体的な話を自ら言って来る可能性が高い。
「マーシャーアッラー」はとても便利な褒め言葉なので、正しい褒め方を理解した上で使いこなそう。
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